人植学会コラム・書評
〈書評〉最新世界のラン図鑑
土橋 豊 著 (淡交社・2,700円+税)
2025.2.14 山根健治 評
ラン類は世界中で最も繁栄した単子葉植物であり、花の美しさや香りが古くから人を魅了してきた。ラン類は野生と人工合わせると3万種余りとなり、分類法も時代と共に変化しており、外観と名前を一致させるのも楽ではない。例えば、以前はレリア・プルプラタとして聞いていたものが、いつの間にかカトレヤ・プルプラタになっていたなど、名前のアップデートが欠かせない。
本書は膨大なランの中から622種類を選び、和名(カタカナ)と学名を美しいカラー写真やボタニカルアートと共に掲載している。属毎に整理され、由来や特徴が示され、野生種に続いてその人工交雑種が紹介されている。DNA分析による分類法に基づく、最新の正確な学名が示されており、専門家にも役立つ。
ネタばれになるので紹介できないが、ランにまつわる20以上のトリビアが紹介されており、新しい情報も取り入れられている。さらに、和名、学名、学名の略語による索引がついていて、図鑑として便利である。
全体を通して、改めて人とランとの歴史的、文化的、実用的なつながりを感じられた。また、ランと昆虫の共生関係についても理解が深まる。本書を読むと、実際のランの花や香りが恋しくなり、ランの展示会や温室に改めて足を運びたくなるかも知れない。ランに興味のある方には必携の本であろう。