人植学会コラム・書評
書評:Bright with Green みどりがくれる、やさしい時間
菊川裕幸・剣持卓也 編著
(神戸学院大学出版会/晃洋書房・2,700円+税)
2026. 3. 12. 山根健治 評
大学の講義で学生に「植物により魅力・効用を感じた経験はあるか?」と問いかけると,勉強に疲れたときの観葉植物,通学路の桜,都会の屋上緑化,祖父母の家の草花などの色々な答えが返ってくる。普段の暮らしの中で誰もが植物との関わりを持っているが,あえて意識している人は少ないかも知れない。本書では,植物の効用を暮らしに取り入れたい人や誰かのために役立てたいと思う人のために書かれている。
7つのケーススタディ,季節の取組みの実例12か月分,みどりと人に関わるコラムなどが紹介されている。各記事が春から冬にかけて本書全体にまんべんなく配置されていて,最初戸惑うが,どこから読んでも良いのだと気づかされる。学術書や教科書的ではなく,多くの人に気軽に読んでもらいたいという著者らの意図がうかがえる。
本書の各記事の見出しがシンプルかつメッセージがよく伝わるよう工夫されていて,9人の園芸療法士が実践する上でそれぞれ大切にしていることを汲み取ることができる。少々ネタバレになってしまうが,例えば「自分の畑で生きがいを耕す」,「園芸療法プログラムはinterestingであれ」,「目が緑を飲み干す」のように,その一言で心に沁みる小見出しが散りばめられている。
園芸療法の第一人者のインタビュー記事において,子どもの頃の道ばたの草花との出会いがその後の人生に大きく影響したことが書かれている。「こども農学部」の活動もコラムで取り上げられているが,改めて幼少期の自然体験や農業体験の大切さを感じさせられた。
花とみどりの美しい写真や執筆者らのイラストもやさしい時間をくれる。春日和の穏やかな午後にページをめくりたい本である。

