人植学会コラム・書評
園芸作業療法ガイドブック 園芸×作業がWell-beingな未来を創る
監修 岩崎 寛・早坂友成
編集委員 川村明代・澤田みどり・田崎史江・中井秀昭
(クリエイツかもがわ・2,800円+税)
2026. 3. 12. 山根健治 評

作業療法は植物を用いた活動と最も相性の良い医療行為の一つであろう。作業活動に植物が入ることで単純な作業の繰り返しも楽しさを増すのではないか?
本書は「作業療法士にもっと園芸を活用してもらいたい」という著者らの想いから,園芸を用いた作業療法を『園芸作業療法』と呼んでいる。特に植物を介して健康維持やQOL向上を目指す園芸活動の中でも,作業療法士が専門的なリハビリ技術として実践する内容が多く含まれている。
第1章では,植物栽培についての基礎知識や自然観察の意義や安全面の注意などがコンパクトにまとめられており,園芸の初心者にも取り組みやすいガイドブックとなっている。第2章では,作業療法士と園芸療法士による実践活動が詳しく述べられている。精神,身体,老年期,就労支援,教育の領域における実践の経緯や事例が詳しく書かれている。第3章では,農業と福祉の織りなすいわゆる「農福連携」への作業療法士の取り組みが紹介されている。農福連携に関わったきっかけはお仕事やご結婚など様々ではあるが,個々の作業に焦点をあてるだけでなく,それぞれの対象者を取り巻く地域社会にも目を向けて記されていることが興味深い。
後半は海外と日本の園芸療法の歴史,園芸療法の適応範囲,作業療法と園芸療法の関係,今後の展開などが解説されている。よく整理されており,ある程度この分野を理解している読者にも役立つであろう。
全体を通して,作業療法士が対象者一人一人のWell-beingを高めるために,プロ意識を持って園芸を用いたリハビリテーションを提供されていることに感銘を受けた。本書は多くの作業療法の事例に基づく帰納的な知見や園芸療法についての幅広い情報が詰まっており,「園芸×作業療法=園芸作業療法」を実践・理解するためのガイドブックとして手元に置きたい本である。

