会長挨拶
人と植物や自然、特に「食」や「社会」とのつながりを表す言葉として、「医食同源」や「身土不二」などが知られています。さらに、植物そのものを薬として扱う漢方の考え方にまで視野を広げると、「草根木皮(そうこんもくひ)」や「一物全体(いちぶつぜんたい)」といった思想も挙げられます。
こうした先人の知恵を踏まえつつ、本学会は「人間と植物との関係」をキーワードに、豊かな人間性を涵養する植物の役割を活かすため、多様な分野の人々が集い、議論を深める学際的な場として活動しています。医療、福祉、農業、教育、心理、芸術、哲学など、分野を越えた知見が交差することで、人と植物の関係性に新たな価値を見出すことを目指しています。
私は2025年度より、宇都宮大学教授・山根健治先生の後任として、会長(理事長)を務めさせていただいております。山根前会長は、宇都宮大学農学部において花卉園芸学のエキスパートとして、花きの生理学的研究などのバイオサイエンス分野でご活躍され、人間と植物の関係学にも長年関心を寄せてこられました。
私は大学時代、九州大学名誉教授・松尾英輔先生の講義を通じて、人間・植物関係学や園芸療法に関する知見に触れ、農業や園芸の奥深さに感銘を受けました。企業での研究・開発業務を経て大学に着任後は、社会園芸学や人間療法学の講義・実習を担当し、現在は理学療法士や作業療法士を目指す学生たちに園芸療法の魅力を伝えています。浅学非才ではありますが、本会の理念を再確認しながら、皆様とともに学会運営に努めてまいります。
副会長には、長年にわたり学会理事を務めていただいている岩崎寛教授をお迎えしております。岩崎副会長は千葉大学園芸学部および園芸学研究院に所属され、ランドスケープ学や環境健康学領域に加え、環境健康学プログラムに関わる研究を精力的に推進されている、見識豊かな先生です。
生成AIやフィジカルAI技術を活用したアンドロイドロボットの開発が進む現代においても、医療、看護、福祉、農業、教育といった分野では、人と人とのコミュニケーションの重要性が一層高まっています。こうした時代だからこそ、物言わぬ穏やかな生命体である植物と人間との関係性を、改めて見つめ直すことが求められていると感じております。
年次学術集会では、本学会の部門から独立して運営されている日本園芸療法学会との合同開催を継続しており、多様な視点からのシンポジウムや研究発表が行われ、毎回盛況を博しています。お近くでの開催の際には、ぜひご参加いただければ幸いです。また、このような連携は、学際的な知の融合を促進する貴重な機会であり、今後も他学会・研究会との協働を積極的に進め、学会活動のさらなる充実を図ってまいりたいと考えております。
会員の皆様のご健康と、研究・実践活動のご発展を心よりお祈り申し上げます。また、人間生活における「植物の価値」に関心をお持ちの皆様には、ぜひ本学会へのご入会をご検討いただければ幸いです。

